ベースを始めたばかりの人にとって、「ピック弾き」という言葉には、ちょっと複雑な印象や、指弾き、スラップ奏法に比べて印象が薄いかもしれませんね。
ネットやSNSを調べても、下記のようなコメントが見られます。
「ピック弾きは邪道」
「ベーシストなら指弾き一択!」
といった意見を見かけることがあります。
でも実際のところ、それは大きな誤解です。
ピック弾きは、決して邪道ではなく、むしろ“音の表現力を何倍にも広げてくれる”素晴らしい奏法です。
私は元々ハードロックから入ったのでピック弾きが当たり前というところから始めたのですが、今もピック弾きメインで弾いてますよ
今回は、そんなピック弾きの魅力を、初心者の目線から丁寧に掘り下げてみたいと思います。

🎸 ピック弾きは「速く・強く・正確に」弾ける
まず、ピック弾きの一番の特徴は、音の立ち上がりが早いこと。
ピックは指よりも硬いため、弦を弾いた瞬間に「カチッ」とした明瞭なアタックが出ます。
この“瞬発力のある音”が、バンドの中でとても気持ちよくハマるんです。
特にロックやパンク、オルタナティブなどのジャンルでは、
ギターやドラムに負けない輪郭のあるベースサウンドが求められます。
そういう場面では、ピック弾きのスピード感とアタック感が大活躍。
また、ピックを使うと「弾く強さ」「角度」「位置」を一定に保ちやすいため、
リズムが安定しやすく、正確なタイム感をつかむ練習にもなります。
これは初心者にとって、とても大きなメリットです。
🧠 ピック弾きは音のコントロール力を育ててくれる
ピック弾きの奥深いところは、角度や力加減で音色が変わることです。
ピックを立て気味に弾けば、鋭いアタックで“硬いロックサウンド”。
寝かせ気味に弾けば、柔らかくて“丸いポップトーン”。
たった数ミリの角度の違いで、
「今日は硬すぎるな」「もう少し優しい音にしたいな」
という調整が、手の感覚だけでできるようになります。
この「自分の手で音を作る感覚」をつかむのが、ベースの上達にとても大事なんです。
ピック弾きは、その感覚を早い段階で身につけやすい奏法といえます。
🪶 よくある誤解:「ピックは単調」ではない
「ピック弾きって単調な音じゃない?」
と感じる人もいますが、実際はその逆です。
ピックを持つ角度、弾く場所、弦をはじく力加減によって、
音のニュアンスは無限に変わります。
例えば、同じフレーズを弾いても――
- ネック寄りで柔らかく弾けば、メロウで温かい音
- ブリッジ寄りで鋭く弾けば、タイトで硬質な音
- ピックを寝かせて弾けば、アタック控えめな“空気感のある音”
これらを自在に使い分けることで、ピック弾きでも音楽的なダイナミクスを表現できます。
🔊 音楽ジャンルごとのピック弾きの使われ方
ピック弾きは、実はロックだけのものではありません。
ジャンルごとに、ちゃんとした“使われ方”があります。
● ロック/パンク
強いアタックで曲を前に押し出す。
ピック弾きの象徴的な使い方。
例:グリーン・デイ、ニルヴァーナ、レッチリ初期など。
● ポップス
音の輪郭をくっきり出して、リズムを安定させる役割。
最近の邦ロックでも多く採用されています。
例:スピッツ、BUMP OF CHICKEN、Saucy Dogなど。
● ファンク/オルタナティブ
意外とピック弾きが多いジャンル。
グルーヴを強調したい時に、アタックのある音が気持ちいい。
例:TOOL、Muse、King Gnuなど。
ピック弾きは、ジャンルを問わず**「音の明瞭さ」と「推進力」**を生む武器なんです。
🎧 有名ベーシストもピックを愛用している
実は、世界的に有名なベーシストの中にも、ピック派は数えきれないほどいます。
彼らのプレイを聴くと、「ピック=ロックだけ」ではないことがよくわかります。
- ポール・マッカートニー(The Beatles)
→ 初期からピック弾きを多用。丸く太い音で、メロディアスなラインを奏でた。 - テツ(L’Arc〜en〜Ciel)
→ 華やかで抜けのあるロックサウンド。ピック弾きの魅力を日本に広めた立役者。 - ピノ・パラディーノ(The Who, John Mayer Trio)
→ R&Bでもピック弾きを駆使し、しなやかで音楽的なフレーズを展開。 - ジャスティン・チャンセラー(TOOL)
→ ピック弾きの変態的表現力。複雑なリズムの中で、音の存在感が際立つ。
彼らの共通点は、「ピックを使っても温かく、音楽的」ということ。
つまり、ピックは使い方次第で“自由自在な表現ツール”になるんです。
💪 初心者こそピックから始めると上達が早い
ピック弾きは「右手の動きがシンプル」で、「音が出しやすい」という特徴があります。
そのため、初心者が音を安定して出す練習には最適です。
指弾きだと、左右の指の長さや力加減の違いでリズムがズレやすいですが、
ピックなら弾くポイントを固定できるので、
「リズムの基礎」や「タイム感の安定」に集中できます。
さらに、ピック弾きで音の強弱やアタックをコントロールできるようになると、
その感覚をそのまま指弾きにも応用できます。
つまり、ピック弾きは**“右手の基礎体力作り”にもなる**んです。
⚙️ ピック弾きで上達するための最初の一歩
これからピック弾きを練習する人に、最初に意識してほしいのはこの3つです。
- ピックの持ち方を安定させること
→ 力を入れすぎず、手首をリラックス。 - 弦に当てる角度を一定にすること
→ 角度がブレると音がガチャガチャします。 - メトロノームに合わせて“音量をそろえる”練習をすること
→ ピック弾きの真価は、音の粒がそろってこそ出ます。
この3つを意識するだけで、ピック弾きの音が一気に「安定」します。
基礎ができてくると、あとは音作りやフレーズのニュアンスで、どんどん個性を出せるようになります。
🎵 ピック弾きは「自由」を与えてくれる奏法
ピック弾きを続けていくと、徐々に「音をどう出すか」を自分で選べるようになります。
強く弾いてもいい。弱く弾いてもいい。
角度を変えれば、音が変わる。
“弾き方で音を変えられる”という実感を得た瞬間、
ベースが一気に楽しくなります。
ピック弾きは、単に“硬い音を出す”ための奏法ではなく、
自分の表現を形にするための手段なんです。
🪞 まとめ:「ピック弾き=邪道」はもう古い
ピック弾きは、むしろ“音の個性を引き出すための近道”です。
ベースという楽器の中で、これほど自由に音色を変えられる奏法は他にありません。
最初は弾きにくく感じるかもしれませんが、
角度や力加減のコツをつかんでいくうちに、
きっと「あ、この音、気持ちいいな」と思える瞬間が増えていきます。
その瞬間こそが、ピック弾きの醍醐味です。
▶ 次回予告
次の記事では、
「初心者でも安定して弾けるピックの持ち方3パターン」
を、写真付きで詳しく紹介します。
力を入れすぎず、ピックを落とさず、きれいな音を出すコツ。
ここを押さえると、ピック弾きが一気に楽しくなります。


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